TrailStory’s blog

Life with Trailrun

あの日の願い〜 FTR100 2017から1年〜

f:id:TrailStory:20190521122141j:image

文=一瀬立子(フリーライター

※2018年11月17日に掲載したブログ記事の再掲載です

 

滑落事故があったあの日、事実確認をひとつひとつしながら、大会の公式声明文を書くのは私しかいないという事態をなんとか飲み込もうとしていた。2017年大会では、私はFTR100の広報を担当していた。

ご家族によるご本人確認が済んでいないし、ご家族は実名報道に反対していた。しかし、警察が実名発表をしたことから、情報はいろんなところから発っせられてしまった。

私はなにをどうやって伝えたらいいのか、泣きながら震える手でパソコンに向かっていた。滑落事故死についての声明文など書いた経験がないし、自分の表現ひとつで誤解を招きかねない繊細な内容だった。

パソコンに向かっていたので気づかなかったが、石川弘樹さんが駆けつけてくれ、私の後ろにしばらくいた。石川さんは奥宮さんの顔を見るためだけに秩父まで駆けつけてくれた。

山田琢也さんはすぐにスポーツの事故に詳しい人を紹介してくれた。大瀬さんはSNSで「みんな落ちついて静かに見守ろう」と呼びかけてくれた。他にもたくさんの人たちが奥宮さんの支えになってくれた。

RUN+TRAILの鈴木さんは取材すればいいのに、一般のボランティアに混ざって最後まで片付けを手伝ってくれた。私は鈴木さんのその姿を見て、鈴木さんに「書きたくない文です。でも、がんばって書きます。ありがとうございます」と言い、大会の声明文を書く覚悟をした。

選手も、ボランティアスタッフも、こちらが詳しい説明を控えなければならない状況の中、苦情を言ってくる人は見なかった。冷え込む秩父の空の下、みんな我慢強く、冷静に目の前の事態の収拾にあたってくれた。

あの時、あの場所には、ものすごい人の力があった。トレイルランナーの力だ。

私は、トレイルランナーはマナーや安全について意識が高い人たちだと信じている。そういうみんなが集まって、トレイルレースは成り立っている。

今年、無事にレースが開催され、みんなが笑顔になること。それが私の願いだ。

亡くなられた方も空から見ててくれますように。

 

※2018年11月17日に掲載したブログ記事の再掲載です

 

#FTR100